△第三篇

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伯父さんは俺の背中をばしばし叩きながら褒めてくれた。

よくやった、さすが私の息子。

伯父さんの低い声は安心する。
家族の元に帰ってきたんだと改めて感じる。

海外のお土産を見るのが初めての伯母さんは嬉しそうだった。

ちなみにお土産は石けんだ。

伯母さんは綺麗好きでよく掃除をしている。
畑仕事だってする。

1日に何度も手を洗うので肌に優しいものを何個か集めて買ってきた。

香りはその人の好みだから出来るだけいろいろなものを。

伯母さんは石けんの香りを包みごしに嗅いで気持ちのよさそうな穏やかな表情を浮かべた。

「どうしてまたこんな早くに?お勉強は終わったの?」

伯母さんは箱に、出した石けんをしまった。

「ホームシックです」
「あらま」
「というのは冗談で、自信がついたので帰ってきました。自分の英語が通じると分かったので」

へー、と伯父さん。

「あと、残りの高校生活をこっちで楽しみたいっていうのもありました」

俺は横に正座する円を見た。

円は顔を赤くして俯く。

出された甘酒に口をつけた。
藤本家の甘酒はあまり甘くない。

もろにお酒、という感じだ。

正月の挨拶を済ませて家に上がったが円が落ち着かない。

そわそわしている。

もうすぐで親戚の人が来るが円は大丈夫なのだろうか。

「あ、そうだ。円君、直樹ちゃんのアルバム見た?」

伯母さんは手を叩く。

「知らない人来ても退屈だもんね。暇潰しにどう?」

もう伯母さんは円を小学生扱いにしている。
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