■第二篇

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「修学旅行?」
「アメリカにはないんだっけ?」

ジフはグラスを布巾で磨きながら天井を見上げる。

「俺達の学校にはないはず」
「そうか。つまらないな」

ジンジャーエールを頼むとすぐに出してくれた。
もちろんこいつのおごりで。

今までの不貞をバーに来る度のジンジャーエール代として許すという話になったのだ。

毎日通うことはないのだが、ジフが来いと言うのでバーに通っている。
たまにクリスがさみしそうな顔をして見送ってくれるけど。

ジフは俺が顔を出すと心底嬉しそうな顔をして目の前のカウンター特別席に案内してくれる。

「お前が来る前にグループでの旅行はあったんだよ。ちなみに俺はスキューバダイビングだった」
「学年で行く旅行ってのはないんだな」
「日本は大勢で動くのか?」
「そう。面倒だけど楽しいよ」

ジフはへーと言うとカウンターに身を乗り出す。

「行きたかったの?修学旅行」

行きたかったには行きたかったが、俺には留学の方が大事だった。

大学に入ってからも考えたが、高校の内に終わらせて大学入学と共にアルバイトをしたいと思っていた。

バイトをしていたら外国に行く時間も余裕もないだろうし。
それには伯父さんも賛成だった。

「そんなに楽しいなら俺も修学旅行がある学校に行けばよかったなー」
「そんなことで学校決めたわけじゃないでしょ」
「まぁそうだけど。俺女の子苦手なの」

ジフはにこりと笑う。
言い寄られれば勘違いされそうなくらいに優しい笑みを見せてくれるような気がするけど。

何処に行っても男だらけの所にしかいないので、彼が異性と話しているのを見たことがない。

どんな反応をするのか。

「最近ケイトとは一緒にいないの?」

近頃変態王の顔を見ていない。
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