■第二篇
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そういえば誕生日か。
椅子に首を預けて天井を見上げる。
白い天井はシミ1つない。
塗り直したばかりなのかもしれない。
斜め後ろを見る。
今クリスはいない。
母親のマリーに頼まれてケリーと買い物に行ったらしい。
俺が起きた頃にはすでに2人の姿はなかった。
そんなに遅い時間に起きたわけでもないのに。
アメリカの夏休みは日本よりも早くに始まっていたらしく、明後日からは学校生活が始まる。
私立の高校なので制服が必要らしいが、俺は例外だ。
たった1年のために制服を購入するのは気が引ける。
だらだら過ごしていたけど、こんなに早く学校が始まるとは。
不安は感じるがわくわく感もあった。
俺は溜息を吐いて頬杖をつく。
3日前のことだ。
クリスが突然、俺と接吻行為をした。
何故そんなことになってしまったのかわからない。
俺が質問をしたからかもしれない。
彼の中で唯一の存在ゲルがいるだけで世界は造られていたのに、それを俺があれこれ言うことなんかなかったのだ。
それがあの日のことを招いてしまった。
でもキスは関係ないじゃないか。
あれからクリスは何事もなかったような顔をしている。
いつものように俺の手を握って家族との短い会話をする。
そういえばマリーがケリーの頼みごとをすると、必ず彼は左耳のピアスを弄る。
そしてにこりと爽やかな笑みを見せてどんな頼みごとでも頷くんだ。