■第二篇

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「よしっ、やるぞ!」

形だけでも、と頭に三角巾を巻いてみる。

宮野が後ろから心配そうに見る。
半ば諦めたような顔をしている。

「円さん、無理なさらずに私に任せておけばいいのではないでしょうか」
「駄目!俺がやるの!」

掃除機を手にした俺を見てシロが逃げていく。

掃除機ってどうやって使うんだろう。
お尻の方からコンセントを挿せばいいのかな?

壁に取り付けられているプラスチックの穴を覗き込む。
どうやったらコードが出てくるんだろう。

「円さん、コードはこっちですよ」

と、宮野が掃除機からコードを引っ張った。
そんな所に隠してあったのかと驚く。

「ありがとう。でも邪魔しないでね」
「円さん―」
「宮野は見てて!」

俺は直樹がいなくなってから初めての彼の部屋の掃除をすることになった。

シロの餌をやりに来てはいたが掃除はしていなかった。

いつの間にか床にはほこりが遊び始め、シロが灰色っぽくなったのは気のせいではなかったらしい。

宮野を連れてくるつもりは毛頭なかったのだが、心配性の彼は後ろをついてきた。

お蔭で車で行くことが出来たけど・・・。

掃除機のスイッチを入れる。

急にけたたましい騒音が発生してノズルを落とす。

「何だこりゃぁっ!」
「あぁ、もう。円さんはそこに座ってて下さい」

奪うように宮野は掃除機を手にしてスイッチを切る。

そして玄関からか黒い革の鞄を持ってきた。
中からひよこの刺繍がされた赤いエプロンを取出し、装着。

宮野のお掃除態勢を見たのは初めてであった。
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