■第二篇

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右にケリー、左にクリス。

兄弟に挟まれながら俺は歩道を歩いていた。

滞在5日目。

やっとのことでケリーを大学に連れ出すことに。

ウィリアム家の兄弟は仲がいいというわけでもないらしい。

ケリーは常に母親か犬のベンジャミンと時間を過ごし、クリスは2階の自室で大人しく本を読んでいる。

俺がその部屋の前を通る時に話し声がすると思えば、カメレオンのゲルと会話を楽しんでいる。

彼の耳には一体どのような声が聞こえてくるのか。
興味がないわけではない。

クリスはお気に入りの青い花のピアスを着けていた。

そして俺の手首を掴んだまま放さない。
家を出てからずっとこのままだ。

話すということもなしにひたすら歩く。

右のケリーは鞄の肩紐を握ったまま暗い表情を浮かべてとぼとぼ歩いていた。

よっぽど学校に行きたくないらしい。

果たして最後まで無言に耐えることが出来るか。

すると、俺の助けの声を聞いたのかクリスが口を開いた。

「街の案内とかはいつがいい?今日でいいならついでにするよ」
「あ、今日でいいならお願い」
「分かった」

当たり前のように肩にはゲル。

たまに1人と1匹―いや、2人は目で相槌を送る。

「君についてきてもらってごめんね」

唐突にクリスは謝った。
昨日は何ともない顔をしていたのに。

「いや、俺も大学見てみたかったし」
「やっぱり大学は広いよね。迷子になっちゃいそう」
「クリスが迷子だなんて」

にこりと彼は微笑む。

「そのまま迷子になれたらいいのに」
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