■第二篇
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長谷川 毅、17歳。
清く、正しく、真っ直ぐに育った高校生です。
彼の噂は瞬く間に広がっていった。
陰で『仔ライオン』と呼ぶ者がいたのを僕は知っている。
確かに顔だけ見れば危害を加えるような顔はしていない。
無害そうな無邪気な笑みを見せたりしていた。
しかし、ある事件をきっかけに彼は独りぼっちになってしまったのである。
当時、僕は事件の内容を聞いただけで本人の顔は知らなかった。
2年生のクラス替えの時に初めて知ったのだ。
誰しもが彼に関わろうとしないので僕が不思議がって隣の席の子に訊いたのだった。
「え?山神?」
普段人に話しかけるタイプじゃない僕に話しかけられた女子は驚いた顔をしていた。
「あの人、何か怖くない?器物破損の大体があの人らしいじゃん」
「そうなの?」
「ウチが見たわけじゃないけど、先週の盗難事件あったでしょ?あれも山神の犯行なんじゃないかって噂」
再び机に突っ伏している彼を見る。
本気で寝ているのか息を立てていた。
そんなことするような人に見えないんだけどな・・・。
しかし彼にも唯一の友人がいた。
それは隣のクラスの藤森君であった。
藤森君のことだからそんな噂鵜呑みにしないし、人を避けるようなことはしない。
藤森君の側にいる彼は眩しいくらいの笑顔を見せて、甘えたり、じゃれたり、クラスでは見られない表情をしていた。
学年トップの藤森君と一緒にいる彼は変に目立っていた。
自分も彼の上辺の部分しか見ていない浅はかな奴のような気さえしてくるほど、彼が見せる表情はだれも見たことがないものであった。