■第二篇
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暇過ぎて死にそう。
左耳は机の天板に響く床を擦る音、右耳はクラスメイトの下品な笑い声が通っていく。
机に突っ伏した状態のまま悶々と考える。
直樹がいなくなって3日。
連絡の方法がパソコンのメールだけというのは分かっていた。
本人が言っていたし。
宮野にお願いしてずっとパソコンの前に座ってメールを待っていた。
来るはずはないが来るかもしれないという淡い期待を込めた俺の気持ちは、ばらばらに砕ける結果となった。
クラスで喋る相手がいなくても放課後は直樹がいた。
体育の時間も一緒だった。
依存し過ぎていたのかもしれない。
今更になって気付く。
直樹がいなければ俺の体はこの椅子から1mmも動かないのだ。
でも約束通りに学校には来ている。
今日が終われば明日から夏休み。
家の人が勢揃いで行き場を失くしている。
こうなったらこの合鍵を使って彼の家に入り浸ってやるんだから。
と、鍵をポケットから出す。
シロにそっくりな猫のキーホルダー。
今日もシロに餌をあげにいかなくては。
昨日家にいったら忽然と姿を消していた。
どうやらベランダが開いていてシロは何処かにご飯を調達しに行っているらしい。
たまにあることだと言っていた。
以前直樹の伯父さんの家に行った時もベランダを開けっ放しであった。
盗人が入ったらどうするのだ。
変な所に無用心。
「はーい、声を上げるな、声を出すな、喋るな」
野沢は要点だけを伝えて手を叩く。
生徒達は笑いを含む顔で教壇に立つ野沢を見た。