─接触2

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「これっきりになったりして」
「さぁな」
「否定してよ」

時計を見ると6時過ぎ。
帰るのに丁度いい時間だ。

並んで校舎を出る。

俺がくわえてやったせいか潤は機嫌が良さそうで手を繋ぎたがっていた。
それを払いながら歩く。

校門には勿論郁美の姿はなく―

「朔馬」

校門を出る前に立ち止まった。

つられて潤も立ち止まる。

学校の向かえの電信柱の陰から郁美が姿を現した。
今日は化粧もばっちりで女らしくスカートを履いてお洒落をしている。

まだ帰ってないとは。
甘く見ていたか。

心臓が激しく叩かれる。

潤は反射的に郁美を睨み付け、俺の前に出てきて立ちはだかる。

「何か用ですか」

郁美も潤の顔に見覚えがあったらしかった。

ちらと潤を見たが後ろに隠れる俺を見る。

「朔馬、話があるの。大事な話」

固まる俺の手首を潤が掴む。

「聞かなくていい。行くよ」

引っ張られて足がもつれる。

「待って」

片方の腕を両手で掴まれた。
捻り上げるように力を入れられて悲鳴が出そうになった。

「私と一緒に来て。来なかったら・・・ね?」

言葉なしの脅迫であった。

「放して下さい」

潤は郁美の手を引き剥がした。
赤く指の痕が残った。

彼女の想いの強さを表した色。
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