─接触2

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心配そうに訊かれた。

「愛想がないって?いつものことだろ」

かわす。

「違うよ。あの日から・・・何か変だよ」
「あの日って?」
「・・・病院に運ばれた日」

冷やりとした。

消したい記憶で頭がいっぱいになる。

俺は笑い飛ばしていた。

「俺がお前におねだりしたのが珍しかったからか」
「おねだりって・・・そうじゃなくて」

言いにくそうに唇を噛む。

多分潤は俺が郁美とセックスしたのを知っている。
俺が分からせてしまったのだ。

体が汚れた事実を口に出さなければ良かったのに甘えてしまって。

眉を八の字にする潤の背中を叩いた。

「何にもねぇよ」

納得のいかない顔をしていたがそれ以上踏み込む勇気はなかったのか黙ってしまった。

正直に言わない俺に全身からしょんぼりオーラが放たれていた。

俺はそんな潤の手首を掴み、立ち止まらせた。

そのまま引っ張って無理矢理屈ませる。

そして口の横にキスをした。

口を離すと真っ赤になった顔が眼前に広がっていた。

「心配すんなよ」
「・・・うん」

潤は力強く俺を抱き締めた。

がっちりした体に包まれて安心する。
このままずっと抱き締めてくれていたらいいのに。

誰よりも俺に興味を持ってくれて、変化に気付いてくれて、こいつなしじゃ生きていけないかもしれない。

この広い世界で俺を優しく包んでくれる人。

潤は耳たぶを甘噛みしてきた。
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