─接触2

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あちこちで勝手に期待外れだと感想が述べられていく。

八雲はがっかりしたようで肩から手を放した。

「てっきりそんな感じだと・・・朝からお疲れさんです」

その言葉をお前に返してやりたい。

潤はまさかと小さく笑い声を上げると桃色の手紙を鞄にしまった。



「嘘だろ」

図書室の窓に頭をつけた。

その横でノートを開きながら座る潤が顔を上げる。
机の上には古典の参考書が積み上げられていた。

「え?」

勉強熱心な奴。

俺は校門を眺め、女が立っている光景に嫌気がさしてきた。

日常に変わりつつあるこの異常な状況。

「ほんとは告白でもされたんだろ」

見たくなくて目を閉じた。

今日は潤が図書室に用があると言うのでついてくことにした。
日暮れまで独りでいるのは手持ち無沙汰だから。

「モテモテだな」

潤は無言で、しばらくすると椅子の脚をひきずる音がした。

目を開けると体をこちらに向け頬に唇で触れてきた。

びっくりして肩をすくめる。

「ば、馬鹿か!こんなとこで―!」
「モテモテだよ」
「はぁ?」

潤は顔の輪郭を撫でて今度は唇に掠めるようなキスをする。

「こんなにモテてどうしよっか」

睫毛が触れるんじゃないかってくらいの距離。

「・・・知らねぇよ」
「知らないふりしないでよ。俺は朔馬のものなんだよ?」
「束縛するつもりはない」

こいつが俺のものであることは否定しない。
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