→素直

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中尾に願っても叶わないのは分かってる。

「拓海じゃなきゃ駄目なんだよ」

これが俺の素直な気持ちだ。

自己中心的でガキくさい答え。

どんなことをしてもいい。
拓海に会いたいんだ。

拓に体を差し出すことになったとしても。

拓海を理由にしたくない。

中尾は小さく笑うと頷いた。

「うん、お前の気持ち伝わったよ。俺も協力する」
「ありがとう中尾!」

心強い。

やれやれと中尾は頬杖をついた。

「お前も随分観察眼が磨かれたね。鈍感な圭助君は何処に行ったんだか」

何処か危なっかしい人が側にいると支えてあげたいって思うことが誰にでもあるのだと思う。

その電波を俺は拓海からキャッチした。

彼の為に強くなろう、彼の気持ちを読み取れるようになろうとしていた。

成長した自覚はないが、自然な流れでそうなれたのだと思う。

俺はこれまでの流れを大まかに中尾に説明した。

「率直に言えば俺等素人でどうにかしようとするのは間違いかも。間違えたことをすれば本当に梅田は戻ってこないかもしれないし」

中尾は空になった紙パックを丸めた。

「だからここは潔く梅田がいた精神科に連れて行った方がいい」
「でも、もし病棟に入ったら拓海の高校生活が一からやり直しになっちゃうよ」
「高校生活とこれからの生活、梅田はどっちを選ぶかな」

中尾の問いかけに言葉を詰まらせる。

「今そいつが高校生活を送っているんだから、どっちにしろ梅田は高校に通っていないも同然。記憶がないんだから」

そうだけど・・・

俺のもやもやが顔に出てたのか中尾は身を乗り出して言い聞かせるように言った。
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