→鈍感

□→
3ページ/16ページ

「人、来る・・・っぁう!」

一際強く摘まれた。

「人来なかったらいいの?」
「そうじゃな―!」

ぱっと拓海は手を放した。
瞬時にどっと疲れが込み上げてきてその場にしゃがみ込む。

いつもそうだ。

最後まで行かない。
好き勝手に触られて終わりだ。

性感帯を痺れさせて放置するんだ。
こっちはたまったもんじゃない。

「も、やめよ・・・拓海帰ってきて」

俺の小さな声に拓海は首を傾けてしゃがんだ。
目線が同じ高さになる。

「俺と今までの拓海は何が違った?」
「・・・全部」
「なら拓海はもう素顔を圭ちゃんに見せられなくなっちゃうね。だってこんなに否定しているんだもん」

もうわけ分かんない。

頭を抱えてうずくまった。

どうしたら解決するのか見当もつかない。
俺が素直に拓海に体を差し出せばいいのか。

目の前にいる拓海は自分が拓海自身であるとすんなり理解したが、今までの拓海は理解しつつも拒んでいる。

だってこの拓海には記憶が全部あるけど、今までの拓海には記憶がないのだから。

得をしているのは当たり前にこの拓海だ。

下半身がじわじわと疼いて落ち着かない。
中尾に会う前に処理をしておかなければ。

俺は立ち上がってトイレの個室に入ろうとした。

それに拓海がついてくる。

「な、何」
「手伝ってあげようか?」
「何言ってんだよ」
「圭ちゃんは乳首だけで感じちゃうんだね」
「お前のせいなんだからな!」

拓海は俺を押しつけてドアを閉める。

狭い空間で体は密着していた。
くっついただけなのに体温が上昇していくのがバレてしまう。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ