Novel

□いい夫婦
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11月22日



部活が始まる前の部室にて、少し遅れて来た赤也が開口一番に言った。


「知ってましたか?今日っていい夫婦の日なんですって!」

「いい夫婦?」

「そ!語呂合わせみたいなもんらしいッス!」

「・・・赤也、語呂合わせという言葉を知っていたのか」

「ちょっ!そりゃいくらなんでもバカにしすぎッスよ柳せんぱ〜い」

大げさに肩を落とす赤也に、蓮二は笑いながら悪いと謝った。


「いい夫婦のぅ・・・。それならウチにもおるな、いい夫婦が」

「は?どこにいるっていうんスか?」

「ほれ、あそこじゃき」


仁王が指差す方を赤也は見ると、そこには幸村と真田がいた。


「・・・幸村部長と真田副部長ッスか?」

「そうじゃき」

そう仁王はきっぱりと言うが、赤也はあまり納得がいっていないようだ。
また、それは蓮二も同様である。


「な〜んであの二人がいい夫婦なんスか?」

「理解し難いな。いい夫婦であれば、俺の方が弦一郎にふさわしいと思うが」

「いや、そこでなんで柳先輩が出てくるんですか」

「それはだな・・・」


蓮二は意気揚々に自分と真田の事について語り始めた。
赤也は長くなると思い逃げようともしたが、腕をがっしりと掴まれていて離れられない。


(真田も罪な男じゃのぉ)


そんなことを考えながら、今の蓮二とは関わりたくないと、いい夫婦と揶揄した二人の方を向いた。


「む、あれはどこに・・・」

「あれなら委員の人が持って行ったよ」

「そうか」

「あ、真田、これどこに置けばいい?」

「ああ、それはそこの棚の上だな」

「分かった」

「幸村、俺が置くからお前は座っていろ」

「いいよ別にこれくらい」

「お前の背では届かんだろう」

「・・・頼む」

「うむ!」

「・・・真田、ありがとう」

「う、うむ・・・」

「なんだよ照れてるのかい?」

「そっ!そんな事は・・・こらっ!抱きつくんじゃない!」

「や〜だよ!ふふっ、嬉しいくせに」

「むぅ・・・!」



ぼ〜っと二人のやり取りの一連を見ていた仁王は思う。


(なんであれやこれで物が分かるんじゃ・・・。おまんらはどこぞのデータマンか。それにしても、真田のやつあんなにデレデレしちょって・・・。皇帝の威厳も無いわ)


半分関心と、半分呆れの混じった溜め息をつく。





(夫婦なら、幸村が奥さんで真田が旦那さんか。こりゃあ見事に尻に敷かれるの)

そう考えると自然と笑えてしまって、思わず口元を手で覆い隠した。




幼なじみという事もあるのだろうが、お互いがお互いを分かり合っていて、自分では出来ない不足している部分を相手が補っている。何よりも、信頼関係や愛情に関しては他の者には入る事の出来ないようなものがある。





「参謀には悪いが、やっぱりこの二人はいい夫婦じゃの」



一言つぶやき、仁王は部活をする為部室を出た。


いい夫婦と、未だ延々と語り続けている蓮二と、それを涙目になりながら聞かされている赤也を残して。





end
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