Novel
□もっと俺だけを
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『真田!』
「む、幸村」
部活が終わり今は下校時間。
部員達と話し込んでいて時間を忘れてしまっていた幸村は、先に帰ってしまっていた真田を追いかけ呼びかけた。
「・・・ひどいじゃないか、俺を置いていくなんて」
「共に帰る約束等していなかっただろう。俺がいつ帰るのも自由だ」
「・・・」
幸村は真田の言う通りだと思い言い返す事が出来なかった。
「・・・何をそんなにむくれている」
「むくれてなんかいないよ」
感情を表に出さないようしていたはずだが、勝手に出てしまっていたようだ。
「むう・・・」
(・・あ、ちょっと困ってる)
真田は幸村に弱い。これは昔からだ。
別に困らせようだなんて思ってはいなかったが、寂しい思いをさせた罰だ。
「真田」
「なんだ」
「お前なんて、もっと困ればいい」
「は?・・・どういう意味だ幸村?」
(そう・・・もっと、もっと困ればいいんだ)
(もっと・・・もっと俺だけの事を考えて、困ればいいんだ)
幸村は目を細め前を向き歩き続ける。
それに真田は付いて行く。
さっきとはまるで逆の立場だ。
「そう簡単に俺より先には行かせないよ」
きっとこの立場はずっと変わらないのだろう
(もっと俺だけを見ていて)
あとがき