任天堂系短編小説
□俺の「弟」
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『ゲームを始めよう…』
その声は聞いたことのない男の声だった…。声は彼の頭の中で繰り返され、彼を苦しめる。
「ぐぅ…あぁ…、誰だ…ヤメロ…ぉ…」
必死に、抵抗しようとも、頭の中で男の声は止まない。
『ゲームだ、ゲームを始めるんだ!!』
「!!!!」
遂に彼は声に耐えられず、動けなくなった。
「兄さん、ちょっと待ってくれよ〜」
「お前の足が遅いんだよ」
ある道を、ある兄弟が2人並んで歩いていた。
兄らしき人物は、赤い帽子に赤い服、青いオーバーオールを着ていて、弟らしき人物より身長が低い。
弟の方は、兄の緑版と言えば納得できるような格好だ。
そう、この兄弟はマリオブラザーズ・マリオとルイージだ。
そして、今その2人が歩いている場所は、彼らの友人のいる町・ダイヤモンドシティへ続く道。
ちなみに友人とはワリオのことである。
ダイヤモンドシティについた兄弟は、ワリオの家に入っていった。
「ワリオ、何だよ『用がある』なんてさ。お前にしては珍しいじゃん」
マリオが黄色の半袖を着た男に話しかけた。
その男こそがワリオである。
「来たか…」
振り向いたワリオの顔はいつにも増して真剣な顔つきだった。
「…何か…あったの?」
ルイージが聞く。
ワリオが口を開いた。
「ワルイージが…、1週間前から行方不明なんだ」
ワルイージとは、ワリオの相棒である。
もっとも、彼は相棒と言うより兄弟分のように思っていて、ワリオのことを「兄貴」と呼んでいる。
つまり、ワルイージから見ればワリオは兄貴分で、自分はその弟分だということだ。
ワリオは続ける。
「アイツ…、行くトコなんてどこにもねぇのに1週間もウチ出たっきり帰ってこねぇ。だから…」
「いいぜ」
「!」
察しが早いマリオは、ワリオが言う前にワリオが言いたかったことの返答をした。
「一緒にワルイージを探してくれってことだろ?アイツも俺達の仲間だからな、手ェ貸してやるよ」
「…そうだね。4人になって、何かを見つけたような感じがしたんだ…ここで1人減ったら、何かが崩れる気がして怖いよね…。ワリオ、僕も探すよ」
「テメェら…」
話がまとまった、その時、