テニスの王子様

□Play lowest in the world
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*仁王が酷い奴です。










この世界はつまらない。


いつも変わらない日々、
いつも変わらない光景。


やっぱりどんな人生にも
多少のスパイスがあった方が
何倍も楽しい。


だから俺はいろんなことをしてきた。


まずは、いろんな女と交際した。
付き合っては別れて、
その繰り返し。

他には、さぼり、カツ上げなどをした。
時には犯罪じみたこともした。


やってるときは面白い。
だが、すぐに飽きてしまう。


だからもっと面白いことを求めて、
また俺は新しい遊びを見つけにいく。


最近は遊びもマンネリ化してきて
本格的につまらなくなっていた。


そんなとき。


一人の男と出会った。


「仁王くん。またあなた
部活さぼりましたね」


それが、今俺に向かって
説教をしている男。


柳生比呂士。


こいつは根っからの優等生で、紳士。


クラスに一人はいる真面目君タイプだ。


こいつだけは唯一俺の思い通りに
ならなかった。


こんな奴、今までにいなかった。
女だったら少し優しくしてやれば
すぐにつけ上がるし、
男だったら一緒に楽しんでれば
そのうち仲良くなる。
そうなればもう俺の手中に入ったも同然だ。


なのに・・・
俺がどんなに優しくしても
仲良くしても
絶対に思い通りに動かない。


・・・最初はただのクソ真面目な
奴だと思っていたのに。


それから柳生比呂士という男に
興味が湧いてきた。
だからダブルスも組んだ。
一緒に昼食も食べるようになった。


それでも決して染まらない。
見かけによらず図太い奴で・・・


そんなことを考えてると無反応な俺に
機嫌を悪くしたのか、


「仁王くん。
聞いてますか?あなたがいないと
ダブルスの練習が・・・」


声に怒りを含ませながら柳生は話を続ける。


栗色の髪。眼鏡の奥の鋭く涼しげな目。
よく見るとそれなりに整った顔を
している。


ふと。


気付いた。


何で俺は今までこんなことに
気付かなかったんだろう。


今まで他人が自分に執着する様を
嘲笑ってきたのに、
これでは俺が柳生に執着している
ようではないか。


俺の顔に笑みが浮かぶ。


・・・そういうことだったのか。


そして気付いたら実行あるのみ。


「・・・のぅ柳生」


やっと反応を返した俺に柳生の顔が
少し和らぐ。
それでも機嫌の悪さは変わらないが。


「何ですか」


「俺・・・柳生のこと好きみたいじゃ」


柳生の顔が驚愕へと変わっていく。


これには俺も驚いた。
今までどんなことをしても
顔色一つ変えなかったあの柳生が、
こんなに動揺しているではないか。



・・・おもしろい。


俺はさらに言葉を重ねる。


「こんなに真剣に好きになったのは
お前さんが初めてじゃ」


少しおおげさに演技をすれば誰だって
信じ込む。柳生だって例外じゃない。


「に・・・仁王くんっあなたは何を
言ってるんですか!!」


「でも好きになったもんはしょうがない
じゃろ?お前さん・・・照れとるんか?」


「そ・・・そんなわけ・・・」


・・・図星だ。
いつもの白い頬がピンク色に染まってる。


「なぁ・・・柳生。真剣に考えて
くれんか?・・・返事待っちょるよ」


そう言ってその場を後にする。
こういうときは去り際が肝心だ。
より相手の印象に残るように。


面白い遊び見っけ。


一人、ほくそ笑む。


これで柳生の弱点は分かった。
恋愛っていうのは盲点だったな・・・。
元から恋とは無関係そうな顔してるし。
しかも男から告白されたとなったら、
本人にしてみればどんなに
想像もしていなかったことか。


・・・じきに柳生は落ちる。


俺の勘はよく当たるんだ。


これから起こるであろう面白いことに
期待しながら廊下を駆ける。


さぁ、どう遊んでやろうか。






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