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□1章ー舞う光ー
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この歪な世界を支配しているのは、恐らく力だ。
少なくとも、そう思う。
復讐に身を焦がす者も、
己を傷付け続ける者も、
忘却の彼方に祈る者も、
欲情に狩られてる者も。
自分自身の心を満たすのは、いつだって、自分の力だ。
そんな滑稽じみた世界を視た者は、決まって言うのだ。
ーー……愉しい、と。
♢♢♢♢♦♦♢♢♢♢
都会の夜は煌びやかさが絶えず、静まることもない。
ザァァ、と激しい雨が硬いコンクリートの地面を濡らす。
丁度時間帯的にも仕事を終わらせたサラリーマンや、学校の下校時間か寄り道であろう学生が傘をさして夜の世界を渡り歩く。
パシャパシャと一定のリズミカルな音色は雨音に掻き消されていく。
煌びやかさが絶えているのは、細い路地裏の道くらいだろう。
最も、そんな暗くては細い路地裏の道に一人の男は居たのだけれど。
暗闇を照らしてしまうのではないかというくらいに、鮮やかな燃えるような紅の髪。眩い金の瞳は褪せることなく輝いている。
例えるならば、まるで太陽のよう。
その長身の男は、前をみつめていた。正確には前の“ゴミ袋に埋もれている少年を”だが。
燃えるゴミ、と表示された袋達に埋もれている一人の少年。髪は色褪せた銀髪。細く、小さい身体も見ればまるで少女のようだが。
その少年の顔色は酷く蒼い。長時間豪雨に打たれていたのだろう。
男は表情を変えず、少年のか細い腕を引くと、そのまま背に担いだ。そうして、身を翻して路地裏を後にした。
この出会いが、大きく運命を揺るがすことになるーー。