長編
□出会
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紫花はあれから一度も起きる事なく、ぐっすり眠っていた。
こっちの時代に来てから4日目…
健気に振る舞っているが、体と心は大分疲れているようだった。普通の女の子だったら、今はもっとパニックしているに違いない。
家にいたら突然湯船が消えて、息が出来なくて…
気づいたら戦国のこの時代に遡ってて…
目を覚ませばこの世に存在しない妖怪なんて物がいるし、言葉を話す邪見様と、不思議な殺生丸様と出会って……
しかし紫花は、こんなに有り得ない事実を受け入れようと努力していた。
神様に焦点を戻せば、この地球がこうして存在している限りどうにかなる気がした。
それに殺生丸という力強い味方も与えられた。
同じ言葉を話す仲間がいて、生きるだけで十分ではないか?
時代は違くても生きてみせる…
私は生まれ変わったのだ。
新しい命がきっと与えられたのだ。
ずっとずっと探していた人生の目的、私が「私」な理由がこの時代で見つかりそうだった。
「……ん……」
固い地面に暫く同じ体勢で横になっていたが、寝相を変えた紫花を優しく吽が鼻で撫でた。
「あれま、まだ寝ている!」
「…寝かせておけ」
太陽は既に顔を出していたが、霧が空を覆っていたので、光は大地に届いていなかった。
殺生丸が側の岩に腰を降ろすと、邪見も溜め息を付き側に座る。
「…この小娘。これからどう致すおつもりで?」
「本性を表すまで待つ。それから決める」
「しかし邪悪な竜でしたなー…二度と出ない様に娘を殺してしまうなんてのは如何でしょうか?」
冗談混じりに言った邪見は、殺生丸の冷たい視線に気づくと、冷や汗が額に出始めた。
「あ、いえ、そのつもりでは!殺生丸様の思う通りにして下さいませ!この邪見めはただの従者…何も申しませぬ!」
「ならば黙っていろ」
殺生丸は横目で紫花を見やった。
紫花は大きく息をして目を開くと、瞳の奥にある星屑が一つ一つ輝き始めた…
「あ…おはようございます…私沢山寝ちゃった」
「今日は戦いになる。勝手に側を離れるな」
「戦いって…人間と?」
「半妖が相手だ。どちらでもない…行くぞ」
「はい!」
(は・ん・よ・う…?)
何の事だろう?