長編

□出会
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出会


















舟は流れに任せて進み、霧が更に濃くなって来た。





「ここで止めろ」





「はっ。どなたかお探しで?」





「無女を探している」





舟を木の幹に縄で巻き付けると、邪見は殺生丸の後を追った。




しかし…





(やれやれ…あの小娘がいないと殺生丸様はよくお話しになる…すると殺生丸様はきっと、この邪見めに心を許して……あぁ嬉しや嬉しや!)










少し進むと、霧と共に邪気が一気に増し、木々が一方向に傾げているのがわかる。一歩先の視界すら既に見えない程になっていた。






「無女…貴様に用がある」






殺生丸は足を止めると、真っ直ぐ先を見つめた。



…霧が徐々に晴れ、顔のない女がヌッと出て来た。邪見は殺生丸の横に立ち杖を構える。








「…おぬしは何だ…我は子を失った母……差し上げる物は何も無い」






「物目当てでは無い。貴様に良い話を持って来てやった…成功すれば獲物は貴様の物だ。…ただし失敗すればお前の命は無い」






「ふっ…妾(わらわ)を試すとでも言うのか」






「子を無くしたお前に失う物は無かろう」






「貴様にその苦しみは分からぬ!………しかしそれで妾の心が静まると申すのならやってやろう」












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