長編

□出会
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それから半時間も経たぬうちに鬼は止まり、殺生丸と邪見は地に降りて来た。






「日が暮れるまでここで待つ」





時計が見れなくなって以来、感覚しかないが、気温が下がって来たのと太陽が真上に無い事からすれば、今は大体3、4時といった所か?


別に何をする訳でもなく、殺生丸はいつもの様に黙り込んで座っているし、邪見はその隣で機嫌を伺おうとしていた。


紫花は携帯電話や本、ゲーム等を少なからず恋しがっていた。手持ち無沙汰の空の手に何かあるというのは本当に幸せで満たされている証拠だ。
今はこうして木の枝を持って地面に落書きをしている自分は、幼稚園児以下にも思える。


時々寝転がって空を見上げたり、殺生丸の背中を見つめてみたり、戦国のこの世にどうやって来たのか考えたり…



自分に与えられた着物を隅々まで眺めたり、再び殺生丸を見つめてみたり…



そうしている間に、日は落ちて行った。

















日が徐々に落ち始めるまで空を飛ぶと、殺生丸が腕を上げたと同時に何かの光の鞭の様なものが光り、阿吽は鬼と少し距離を置く様に背後を飛び始めた。

何だか知らないが、どうやら戦いは間もなく始まるらしい。


きっと阿吽に合図をしたのだろうと思う。





鬼と数百メートルも離れると一同は急停止した。
阿吽も静かに止まると高度を下げ、隠れながら様子が見える木々の隙間に体を降ろした。



上を見上げれば白い点となった殺生丸と、月の中に黒い影があるのが見える…




「あれは…何?」




一番前には旗持ちの様な者と、その後には牛のいない牛車が見えた。はためく布の隙間からは鮮やかな着物に身を包んだ女性がチラッと見えた。





何で人間の女の人があんな所に…?












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