短編 T
□この腕に甘えて
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じゃが、俺から聞いて答えてくれるほど
香乃は簡単な女じゃない。
きっと、香乃なりの
話すタイミングというもんがあるんじゃろう。
じゃから、そんな時は待つしかない。
香乃が、俺に甘えてくるまで、
他愛のない話をしつつ
ただじっと待つ。
会話が途絶えた時、
香乃がそろりと俺に腕を伸ばしてくる。
きゅっと俺の服を掴み、
珍しくも香乃から俺に抱きついてくるから
俺は香乃を抱きしめ返し、
髪を撫で、背を撫でて
香乃がぽつりぽつりと話す声を聞く。
相槌を打つだけで、香乃の話は遮らず。
時折、
香乃の表情や
雰囲気を確認しながら、
香乃の表情に笑顔が戻るまで
ただ、じっと話を聞く。