短編 T
□運命の人
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そこに座って、
ただぼんやり時間を過ごしたり。
転寝したり。
人気(ひとけ)がないから、落ち着いていられるし。
何より、
香乃を感じていられる場所じゃった。
不意に、誰かが俺の肩に触れた。
「ニオくん」
独特の呼び方と、その声。
香乃じゃと、分かった。
久々に聞いたような気がするんは、
俺がまだ
寝ぼけとるせいなんじゃろか。
薄く瞼を開けると、
鳶色の双眸が俺を見つめていた。
「……香乃?」
「起こしちゃってごめんね、疲れてるのに」
「別に、疲れとらんぜよ」
「そう? ちょっと痩せたみたいだから、心配しちゃった」