短編 T
□envious
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さっき丸井と話とったときは、笑うとったじゃろ。
小首を傾げて、丸井の顔を見上げて話とったじゃろ。
それなのに、
何で俺を見ん。
「小林、話す時は相手を見んしゃい」
「……」
俺の言葉に、小林が顔を上げた。
今にも泣き出しそうな表情。
鳶色の双眸には恐れが滲んどった。
苛々する。
俺に対してだけ、笑わん小林に。
「英語の先生が、ノート提出するようにって」
「分かったと」
用件だけ告げて、小林は逃げるように去って行った。
何で笑わん。
丸井には笑いかけとったのに。
何で目も合わさん。
丸井と話す時は、ちゃんと顔を上げとったのに。
「仁王、ちょい顔貸せ」