幼なじみに恋をしました
□埋めようのないゼロセンチ
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その声に
ようやく思考が動き出した私は
慌てて机から
世界史の教科書を引っ張りだした。
「はい、どうぞ」
差し出した教科書を
仁王くんが受け取った。
教科書をじっと見つめて
少ししてから
私へと視線を向けてくる。
何を考えているか
分からない眼差しに見詰められて
私が居心地の悪さを感じ始めた頃。
「ありがとな」
微かな笑みと優しい声。
そして
一度だけ頭を撫でられた。
昔の幼馴染みを思い出して
とくりと心臓が跳ねた。
帰っていく仁王くんの背中を見送った
数分後──・・・
「幸村くん
世界史の教科書、貸してくれぃ!」
授業開始のチャイムが鳴る寸前に
C組に駆けてきた丸井くんと
そんな彼に教科書を渡す幸村くん。