幼なじみに恋をしました

□埋めようのないゼロセンチ
3ページ/9ページ






その声に

ようやく思考が動き出した私は

慌てて机から

世界史の教科書を引っ張りだした。





「はい、どうぞ」





差し出した教科書を

仁王くんが受け取った。





教科書をじっと見つめて

少ししてから

私へと視線を向けてくる。





何を考えているか

分からない眼差しに見詰められて

私が居心地の悪さを感じ始めた頃。





「ありがとな」





微かな笑みと優しい声。

そして

一度だけ頭を撫でられた。










昔の幼馴染みを思い出して

とくりと心臓が跳ねた。










帰っていく仁王くんの背中を見送った

数分後──・・・





「幸村くん

 世界史の教科書、貸してくれぃ!」





授業開始のチャイムが鳴る寸前に

C組に駆けてきた丸井くんと

そんな彼に教科書を渡す幸村くん。




 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ