最果てで見る夢

□夕暮れ時の帰り道
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私の前の彼女も。

その前の彼女も。

ずっとずっと前の彼女も。





仁王くんの

歴代彼女たちが辿った試練。





てっきり私も

それに耐えなければならないと

思っていたのに。










『夕暮れ時の帰り道』










「何もないね」

「何もないねえ」





放課後の教室で

私は親友と顔を突き合わせながら

小首を傾げていた。

お互い

机の上に肘をついて

掌に顎を乗せた格好で。





平和なのは良いことだけれど

何となく

拍子抜けしたのも事実だった。










仁王雅治の彼女は

仁王ファンの制裁を受ける。










これは

暗黙の事実だったはず。





それなのに私は

仁王くんと付き合い始めて

一ヶ月も経つと言うのに

呼び出しを受けたこともない。





呼び出しがないどころか

些細な陰口を叩かれることもない。

あの暗黙の事実というのは

実はただの噂だったんだろうか。





そう思ってしまうほどに

平和な毎日を過ごしていた。





「何ていうか・・・。

 もっと引っ切り無しに

 呼び出しがあるかと思ってたのに」

「ま、平和なのは良いことだ」





眉間を寄せて言ってみれば

親友は笑って言葉を返してくる。





まあ実際

いじめられるのは嫌だったから

この事態は

大歓迎するべきなんだろう。





これならば

もっと早くに

仁王くんの告白に返事をするべきだったと

後悔さえしてしまう。




 
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