最果てで見る夢

□詐欺師の秘密
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仁王雅治は

コート内外を問わず

詐欺師だというのは周知の事実。





だが

レギュラーのみが知る

事実もあったりする。










『詐欺師の秘密』










休み時間

香乃は何となく

左斜め前方に視線を向けていた。





窓から差し込む陽光に光る

銀色の髪が綺麗だなと思いつつ

ここ最近の

仁王雅治の行動を思い起こしていた。





仁王と香乃はクラスメート。

それ以外の関係などない。





だが

自分はクラスメートとしても

仁王に認識されていないのではないだろうか。

避けられているような気がしてならない。





友人に言っても

「気のせいじゃない?」とか

「自意識過剰」だとか言われそうなので

言ってはいないのだが。





それでも

思ってしまうのは

香乃が仁王を

意識して見ているせいなのだろう。





ここの所

やたらと視線を感じていた。





授業中は

仁王の席が香乃より前なので

視線を感じることはない。

問題は休み時間だ。

強い視線を感じて振り返ると

そこには必ず仁王が居た。





大概

香乃が振り返る頃には

仁王の視線は

在らぬ方向に向けられているのだが

稀に視線が合わさる瞬間がある。





それでも

暫らく見詰め合うというより

仁王から一方的に睨まれた後

ふいと視線は外される。





他にも気になることはある。





仁王は

男女分け隔てなく

誰とも喋っている。





友人というカテゴリーが広いのか

人を惹き付ける何かがあるのか。

仁王はいつも

誰かと話している。

それは

授業の内容のことだったり。

教師のことだったり。

昨日見たテレビの話だったり。

色々だ。





特別込み入った話ではなく

日常の中の

ひとコマ的な話だ。

だが

その話に香乃が加わると

途端に仁王はふらりと席を立つ。

周りに気付かれないように

何か理由をつけて

席を立ってしまう。




 
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