最果てで見る夢

□切なる願い
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「俺な

 ほんまに

 香乃さんのこと好きや」

「・・・」

「大好きなんや」

「・・・」





そんな

優しい目で言わないで。

優しい仕草で

髪を撫でたりしないで。





じゃないと私

勘違いするでしょう?





この恋は一生続くと

勘違いしてしまうでしょう?










『切なる願い』










香乃は

十代だった頃の

自分の恋愛を思い出して

何となく泣きたくなった。





十代の恋愛は

いま思い出せば

それは恋や愛というものよりも

憧れに近いものだった。





恋に恋する

自分自身に酔うような

儚く

そして可愛らしい気持ち。





それならば

今の香乃の恋愛は

どうなるのだろう。





香乃自身はもう

二十代のいい大人だ。

それでも

相手のこの男は

・・・年齢的には

男というより少年だ。





彼はどうなんだろう。










「ねえ侑士」

「ん?

 もう仕事終わったんか

 香乃さん」





就業時間を過ぎても

終わらなかった仕事を

自宅に持ち帰り

処理していた香乃。





それが終わるのを

香乃の自宅に来る途中に

書店で買ったテニス雑誌を読みながら

大人しく待っていた忍足は

自身の名を呼ぶ声に

眼差しを香乃へと向ける。





雑誌を置き

座っていたソファから立ち上がった忍足は

机に向っていた香乃へと歩み寄る。





「まだ終わらへんみたいやな。

 コーヒーでも入れてこよか?」

「あ、うん。

 お願いできるかな」

「任せとき。

 めっちゃ美味いコーヒー淹れたるわ」




 
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