最果てで見る夢

□四つの飴玉
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傍におらんと

無意識に彼女を探して。





姿を見れば

声を掛けとうなる。





何とか俺を

意識させとうて。

でもそれが出来ん。





本気の恋は厄介じゃと

以前聞いたことがあった。





そん時は

そいつが

不器用なだけじゃろ、と思うとったが。





どうやら俺も

その不器用な男と同じじゃった。










『四つの飴玉』










朝練が終わり

教室に向う。





その間も

名前も知らん女子に声を掛けられるが

適当に挨拶を返して教室に急ぐ。





別に急がなならん理由はない。





テニス部の朝練は

そんなギリギリまでやっとるわけじゃない。

ただ

一秒でも早く

会いたい人が居るだけのこと。





「おはよう、仁王くん」

「あー、はいはい。

 おはようさん」





また

知らん女子に声をかけられた。





適当な挨拶じゃったのに

名前も知らん女子は

友人らしい数人の女たちと

嬉しそうに走り去っていった。





「仁王くんに挨拶しちゃったー」とかいう声も

聞こえてくる。





昔の俺じゃったら

挨拶したことの何が嬉しいんじゃ、とか

冷めたこと思うとったが。





今の俺は

そんな女子らの気持ちが解る。





俺も

声を聞けただけで

嬉しいと思える女に出会えたからの。










「小林、おはようさん」

「あ、おはよう。仁王くん」





教室に入り

クラスメートに声を掛けながら

小林の隣の

自分の席に腰を下ろす。





俺が

一秒でも早く会いたいと思う女。





大人しすぎるほどに大人しい女で。

最初

俺は怖がられとったんか

まともに

顔も見てくれんような女じゃった。




 
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