最果てで見る夢
□卒業
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季節が
幾度巡っても
桜吹雪を見る度に
思い出す
君の笑顔と
胸の痛み
『卒業』
中学、高校、大学と
氷帝に通っとったから
卒業式なんてもんに
あまり感慨はなかった。
ただ
桜吹雪の中に佇む香乃が
綺麗やと思うただけで。
鳶色の双眸に涙を溜めて
慈しむように
瞳を細めて校舎を見上げるその姿を
見つめとった。
「跡部ー
卒業おめどてう&ありがとうパーティしようぜ!」
中学でも高校でも大学でも
卒業式の後には
岳人やジローが
跡部に声をかけとって。
その安直なパーティの名前に
跡部が眉を顰めとった。
そしてまた数年が巡り
桜の季節。
俺も既に
医者という肩書きを持っとった。
今日は
俺にとっての卒業式。
相変わらず
桜は雪のように舞っとって。
式には
うってつけの日やった。
ホテルのロビーには
見知った仲間が
既に何人か来とる。
あいつらの
普段あまり見慣れへん正装に
自然と笑みが漏れた。
「あー、忍足。
久し振りだCー」
もう社会人になって随分経つのに
ジローの口調は変わらんかった。
それにまた笑う。
「久し振りやな、ジロー」