最果てで見る夢

□無自覚の興味
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初めて小林を見た記憶は

はっきり言うて俺にはない。





おそらく

三年に進級したばかりの頃には

もう視界には入っていたはずじゃ。





ただ

記憶に留まらんかっただけで。










『無自覚の興味』










このクラスは

担任の趣味なんか

席替えが月一で行なわれる。





別に

一年間同じ席でもええじゃろと思うとったが

今は担任には感謝しとるよ。





俺が

小林香乃という名を

記憶に留めたんは

必要ないと思うとった

席替えが切欠だったんじゃしの。





「小林さん

 一ヶ月間、宜しくの」

「あ、えっと・・・

 宜しく、お願いします」





隣の席になった女子に

声をかけた。





自惚れるわけじゃないが

こうして俺から声をかけて

ここまで素っ気無く返されたんは

初めてじゃった。





いや

素っ気無いんじゃない。





関わりたくないという空気が

感じられた。





怯えに近い戸惑い。





小林の声は徐々に小さくなって

最後のほうは

蚊の鳴くような声じゃった。










(大人しいを通り越して、怯えとる)










宜しくと言う間でさえ

俺を見ようとしとらんかった。





一瞬も

目を合わせようとはせん。





普通なら

失礼な奴じゃとか

面白味のない奴じゃと思うんかも知れんが。

俺の場合は

今までにない反応に

逆に興味が湧いた。





何に怯えとるんか。

何で目も合わせようとせんのか。




 
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