短編 T
□悪戯
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■注意
この作品には性的描写が含まれています。
ご注意ください。
『悪戯』
ゆっくりと、意識が浮上していく感覚。
うっすらと目を開けば、薄暗い室内が見えたんじゃ。
俺の部屋の、見慣れた景色。
カーテンを引いてあるせいで外は見えんが、おそらくはまだ起きる時間じゃないはず。
ベッド脇に置いてある置時計を取ろうと腕を伸ばした。
動いたせいで僅かな隙間から入り込む冷気。
ひやりと流れ込む空気に、毛布の中の温もりが身じろいだ。
「すまん、起こしたか?」
寝起きの掠れた声で腕の中の香乃に問いかけてみたが、返事はなかった。
おそらくは無意識に俺に擦り寄って来たんじゃろう。
時計は朝方の四時を少し過ぎた時間を指し示しとった。
少しずれ落ちた毛布を引き上げ、寒さに縮こまっとる香乃を抱き締め直した。
俺の体温が余程気に入ったのか、香乃はすりすりと俺の胸元に頬を擦り寄せとる。
「可愛いのぅ」
恥ずかしがりな香乃は、意識の無い今のような時にしか甘えて来ん。
そんな貴重な香乃を目にした俺は、今きっと誰にも見せられんような締まりの無い顔をしとるんじゃろう。
自分でもニヤけとるんが分かった。