短編 T

□視線の先
1ページ/4ページ

注意
この作品には性的描写が含まれています。
ご注意ください。










自分がこんなに嫉妬深いとは知らんかった。

平日の学校や、休日のデート中。

香乃の隣にいると感じる、男共の視線。





人の女を、物欲しそうな目で見るんじゃなか。

欲に塗れた目で香乃を見てええんは、俺だけじゃ。










『視線の先』










人気のない資料室に聞こえるのは、先ほどまでの口付けで乱れた香乃の呼吸音。

俺を止めようとする制止の声。

何とか逃げ道を探そうと、香乃は左右に視線を彷徨わせとるが。

俺の指が香乃の顎を掴むと、焦りを帯びた眼差しが俺を見上げた。





「ぁ…やめて、ニオく…」





返事の代わりに、香乃の唇を己の唇で塞いだ。

いまだ抵抗を続けとるが、香乃の腕に力はそう入っとらん。

俺の体を押し退けようとシャツを掴んだんじゃろうが、縋っとるようにしか見えん。

ただただ香乃に熱を灯すような口付けを繰り返しとったせいか。

すでに香乃の目はとろんと熱に浮かされたように潤んどった。





「止めて? そんな潤んだ目でなに言うとる」





嘲笑と共に耳元で囁き耳朶を舌で嬲ってやると、香乃が体を震わせ肩を竦めた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ