短編 T
□視線の先
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■注意
この作品には性的描写が含まれています。
ご注意ください。
自分がこんなに嫉妬深いとは知らんかった。
平日の学校や、休日のデート中。
香乃の隣にいると感じる、男共の視線。
人の女を、物欲しそうな目で見るんじゃなか。
欲に塗れた目で香乃を見てええんは、俺だけじゃ。
『視線の先』
人気のない資料室に聞こえるのは、先ほどまでの口付けで乱れた香乃の呼吸音。
俺を止めようとする制止の声。
何とか逃げ道を探そうと、香乃は左右に視線を彷徨わせとるが。
俺の指が香乃の顎を掴むと、焦りを帯びた眼差しが俺を見上げた。
「ぁ…やめて、ニオく…」
返事の代わりに、香乃の唇を己の唇で塞いだ。
いまだ抵抗を続けとるが、香乃の腕に力はそう入っとらん。
俺の体を押し退けようとシャツを掴んだんじゃろうが、縋っとるようにしか見えん。
ただただ香乃に熱を灯すような口付けを繰り返しとったせいか。
すでに香乃の目はとろんと熱に浮かされたように潤んどった。
「止めて? そんな潤んだ目でなに言うとる」
嘲笑と共に耳元で囁き耳朶を舌で嬲ってやると、香乃が体を震わせ肩を竦めた。