短編 U
□恋の始まり─幸村の証言─
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ふふふ、と。
つい声に出して笑ってしまった。
俺と話をしていた小林さんが、
不思議そうに俺を見上げる。
その視線に、何でもないと答えを返すけれど。
本当は、
彼女の少し離れた背後から向けられてくる視線が、
楽しくて仕方ない。
少し天然な彼女は、
こちらに向けられている視線と、
その意味に全く気付いた様子はない。
あれほど苛烈な仁王の視線をスルーできるなんて、
小林さんは大物かもしれない。
委員会の関係で、
俺はいま小林さんと話をしているんだけれど。