短編 U
□迷子─仁王視点─
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「小林先輩?」
似ていると思うた時には、すでにそう声を掛けとった。
夜更けと言うてもええ時間帯じゃ。
そんな時間にふらふら出歩くような人とは思えんが、
振り返ったその人は俺の良く知る香乃先輩じゃった。
「こんな時間に何ばしよっと?」
そう問いかけながら、香乃先輩に近付く。
俺の姿を見て、心底安心したとでも言いたげな表情。
何ぞあったんじゃろうかと、心配したんじゃが。
「迷った」
ひどくあっさりと簡潔な答えが返って来たとよ。
その普段と変わらん物言いに、俺の心配も少し薄れたんじゃ。