短編 T
□転寝彼氏にご注意を
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薄く開いたニオくんの唇に、
触れるだけの口付けをした。
「……ほぅ」
寝ているとは思えない声音。
「俺が寝とると、香乃からキスしてくれるんか」
そして到底寝起きとも思えない
笑みを含んだはっきりとした口調。
驚いて身を引こうとした私の腕を素早く掴むと、
ニオくんの方へ強い力で抱き寄せられた。
「お、起きてたの?」
「じぃっと可愛らしく見上げてくるから、どうしたんかと思うて様子見とったんじゃよ」
じたばたとニオくんの腕の中でもがく私を気にもせず、
ニオくんは機嫌良さげに私の頭に頬摺りをする。
柔らかな銀髪が、私の頬や首筋を擽る。
それが擽ったくて。
でも幸せで。
私は肩をすくめて笑った。
そんな私を見下ろすニオくんの双眸も笑みの形に細められていた。