幼なじみに恋をしました
□埋めようのないゼロセンチ
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だから
彼が
どんな表情なのかは分からなかった。
「昔みたいに
もっと俺を頼りんしゃい」
振り返った仁王くんは
じっと私を見つめたまま。
ゆっくりと私に近づく間も
眼差しは私に注がれたまま。
私の側まで歩み寄り
仁王くんの大きな手のひらが
私の頬に触れた。
人気(ひとけ)のない社会科準備室は
静まり返っていて。
仁王くんの声と
私の
煩いくらいの心音しか聞こえない。
「香乃」
久し振りに名前を呼ばれて
胸が苦しくなった。
きゅん、と
高鳴るような疼きを感じた。
仁王くんの真剣な表情。
真っ直ぐ見下ろしてくる眼差し。
「そう呼んだら、いけんか?」
「何で、急に・・・?」
呼吸も
まともに出来ないくらいに恥ずかしくて
そう問うのがやっとだった。