幼なじみに恋をしました

□埋めようのないゼロセンチ
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丸めた大きな地図をもって

ふらふら歩いていたらしい私を見兼ねた仁王くんが

地図をひょいと

私から取り上げたのだ。





「重くない?

 やっぱり私が持とうか?」

「お前さんに持たせたら

 いつか転びそうで見てられん」

「でも、私が先生に頼まれたんだし」

「そんな顔させとうて

 手伝っとるんじゃなか。

 こういう時は素直に

 『ありがとう』言いんしゃい」





余程

酷い顔をしてたんだろうかと

手のひらで頬に触れる。





すると

隣を歩く仁王くんが

小さく声を出して笑った。





「泣きだしそうな顔、しとったぜよ」

「え?」





ようやく社会科準備室に着き

鍵を開ける。





先に中に入った仁王くんの後に続き

私も準備室に入る。





あまり人が入らないここは

少し埃っぽい。





「笑ってくれんか? 昔みたいに」





持っていた地図を

壁に寄りかけるように置く仁王くんは

私に背を向けている。




 
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