短編 T

□甘いココアとミルクティー
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「仁王先輩も帰りどっか寄って何か食って帰りましょうよ」

「俺はパスするぜよ。用事があるんでな」






赤也が絡んできたが軽くかわすと、丸井がにやりと嫌な笑みを浮かべた。

ああ、もう、何でこの部は構いたがりのイジりたがりばっかりおるんかの。

そんな思いを込めた目で丸井を見遣る。






「仁王は今日、香乃ちゃんと帰り道デートだから無理だぜぃ」

「えー、俺も香乃と一緒に帰りたいっす、仁王先輩!」

「馴れ馴れしく呼ぶんじゃなかよ、おまんら。特にそこのワカメ、海の藻屑にされたいんか」






低音で唸るように吐き捨てると、流石に藻屑は嫌じゃったんか赤也が黙り込んだ。

むすっとした表情をし、「仁王先輩マジ怖ぇー」と若干棒読みなんがまた腹立たしい。

ここで赤也を構って香乃を待たせる訳にもいかんので、放っておくことにした。






「じゃ、先に上がらせてもらうぜよ。お疲れさん」





横を通り過ぎる時に、赤也の頭に拳骨を一発お見舞いしてやった。

「いってー!」なんて声が聞こえたが、俺の手も痛かったんじゃから痛み分けっちゅうことでよろしくなり。










そうして今は、香乃と二人の帰り道。

香乃が寒い寒いと泣きだしそうな声を出しとったんで、コンビニに入って飲み物選び。

俺はもう買うもん決めとるんで、香乃が何買うか決めるまで隣に立って悩む香乃を眺めとった。

今日はどうやらホットココアとミルクティー、どっちにするかで悩んどるらしい。

可愛らしくむぅっと眉間に皺を寄せて真剣に悩む香乃と、それを見下ろし声を出さずに肩を震わせ笑う俺。






「まーくん、笑い過ぎ」

「そうは言うても可愛すぎじゃ、お前さん」






俺の言葉に、香乃が今度はぷぅっと頬を膨らませた。

俺にからかわれたと思うとるらしいが、本心から言うた言葉なんじゃが。
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