短編 T

□猫の集会場
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近所に

猫の集会場みたいになっとる場所があった。

部活がオフの日の昼間にそこに行ってみれば

日向ぼっこしとる猫たちの姿。

最初は警戒しとったらしい猫たちも

俺が餌をくれる人間じゃと理解したら

たちまち猫撫で声で寄って来よる。

全くもって

勝手な奴らじゃと言いながらも

すり寄ってくる猫の頭を撫でてやる。





俺にすり寄っとった猫が

不意に

何かの気配を感じたように動きを止めた。

じゃが

猫に警戒の気配はない。





「お前さん方が待っとった

 もう一人が来たようじゃな」





俺の言葉に反応するように

猫が一匹ニャアと鳴いた。










『猫の集会場』










俺が

勝手に猫の集会場と呼んどる

この場所。





昔は

人が住んどって手入れもされとったらしいが。

今は庭は荒れ放題で

家も補修せんと

人が住めん有り様になっとる。





初めてここに足を踏み入れたんは

猫の声に誘われたからじゃった。

にぃにぃと鳴く仔猫の声が

助けを求めとるように感じて

放っておけんかった。










高い石塀が邪魔しとって

外からじゃ庭の中を見ることができん。

ここがすでに

人が住んどらん廃屋なんは知っとったから

塀を乗り越えて

中に入り込んでみたんじゃ。





外からは見えんかったが

庭も家の外壁も荒れ放題で

まるで幽霊屋敷のようじゃった。





仔猫の声はまだ聞こえとる。





その声を頼りに足を進めてみれば

力尽きたらしい母猫と

母猫に寄り添う

一匹の仔猫の姿があったんじゃ。





「俺を呼んだんは、お前さんか」




 
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