夢声

□声を聞かせて(第三章)
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御礼状とわかっていても


文を開く手が震えるのを
鈴姫は感じた

狛村左陣様


思わず「さじん様」
と、声にだすと

鈴姫は身体が熱く熱を放つのを感じた

文面からは
抑揚の無いただの御礼状だが

その文字からは
達筆で又、男性らしい
力強い文字に

鈴姫は
抱き上げられた腕の厚みを感じ


胸の奥から

足の先まで
言い様の無い熱が帯びているのを

感じた


困った



鈴姫は知っている
この感情を何と呼ぶのか…


身体のこの火照りの埋めかたを



文を鏡台に仕舞い

少し障子を開け

夜風に吹かれると


火照りが引くのを

鈴姫は待った



今日は満月


明日はこちらから
文を出します


心の中で1人ごちた
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