夢声

□声を聞かせて(第二章)
2ページ/8ページ

慌てて涙目の忍を
狛村の腕から見下ろす鈴姫


「心配をかけた様です」


抱き上げたままの
狛村をちらりと見上げ

鈴姫ははにかむと

狛村はやれやれと
目を鈴姫に向ける


見つめ会うかたちになった
距離の近さに

狛村と鈴姫が
照れくさそうに笑いあうと


忍は一瞬 弾けたように
狛村へと近づき


「そなたの様なものがお嬢様を
抱え上げるなど!!!」


声を上げよとしたその時


忍の言葉を遮る様に


するりと割入る白哉に制された


狛村の腕の中の鈴姫に
白哉が
優しく手を差し伸べると


頷きながら鈴姫も手を伸ばす

ふわりと
彼女の体が狛村の腕から

白哉の傍らに支える様に降り立つと


急に軽くなった両手が
少し寂しく感じられた


手を握り支える様に優しく腰を抱く
二人は絵巻物から抜け出した
男女の様に見え

狛村は自分の武骨な拳を握りしめた



白哉は

狛村に一礼し

「朽木の親しい者が、世話になった」

狛村は頷き一礼を返すと

詰所の奥へと歩き出そうとした


後ろに控えていた射場が

狛村の後を追うように行きかけ


踵を返して


鈴姫に近より
藤色の包みを渡す



鈴姫は

射場を引き止め


足早に去る
七番と記された隊長羽織の
背を見つめながら


藤色の包みの中から


二箱おはぎの小箱を取り出し
射場に渡す

「本当にお世話になりましたと
お伝え下さい」


深々頭を下げながら
その背を見つめた
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ