ユヴォ駄文(短編)

□忘年会やろう・翌朝
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忘年会やろう・翌朝








昨夜服を脱がせた(脱がせるのに苦労した!)まま、ネグリジェを着ずにヴォルフラムを
寝かせてしまったので、コンラッドが来る前に何としても起こさなきゃとおれは画策した。

名前を呼んでも、うーん、と言うだけ。

布団を捲ってもピクとも動かず。(寒くないのか?)

肩を揺さぶったら脚が飛んできた。(ものすごく痛かった。)

昨晩、おれが背後に立っただけで拳が飛んできた時のお前はどこに行ったんだ?

眠りの森の彼方へ行ったのか。

流石に眠りは浅くなっているらしく、いつものぐぐぴは聞こえないけれど、すーかすーかと
心地よさそうな寝息を立てている。

こんなによく寝てるのに起こすの可哀そうだけど、仕方ないんだよ。

と、自分にも言い聞かせて丸くなって寝ていたヴォルフラムを転がした。

ううん、と言ってその寝顔が上を向いた。

ほんっと、綺麗な顔してるよなあ。

透き通りそうな白い肌が奇跡のように完璧な顔の輪郭を作ってて、整った金色の眉、これ
また金色の長い睫毛が朝日にきらめいている。

みなさーん、これはおれの婚約者でーす!!

おっと、意味もなく主張してしまった。

いやもう、ほんと、これがおれのものだって思うだけでゾクゾクしてくるよ。

「ヴォルフラムーぅ、起きてくれよー!」

ふと、寝息を紡ぐその口元に目がとまった。

桜色の形のいい唇。

そっとそこに指で触れる。

「眠りの森で眠るお姫様にはやっぱりこれか?」

そう言ってみるけど、返事はスーと相変わらずの寝息だけ。

「別にいまさらだしな」

ちゅ、と軽く口付けた。

……反応なし。

どうせそうだと思ってたよ!

「本格的にしちゃうぞ」

思いっきり深いキスでも、とヴォルフラムの左右に両手をついて覆いかぶさる。

頼む、蹴りは来ないでくれ。

そう願って腹でヴォルフラムの腹を抑え込む。

そうして、さていざキスしようとヴォルフラムの顔を見た。

至近距離で見ると、さらに綺麗な顔してるのに驚く。

ふつう、近すぎる距離で見たら少し粗があってもいいんじゃねえの?

どこまでも綺麗なつくりの寝顔に、さらに触れ合った肌から体温まで伝わってきて、心臓が
ドクンとはねた。

ああ、やばい。

これでおれ、ディープキスまでする気か?

いや、今は朝だし、今キスしたらかなりやばいことになる。

そう思って、ヴォルフラムの上からどこうとした。

「ん……ユーリ……?」

「うわあっ!!」

いきなり目の前の寝顔がパチッとエメラルドの瞳を開いたものだから、驚きすぎて動け
なかった。

「……なにしてるんだ?」

「おおおお前を起こそうとしてたんですっ!! ハイ! おはよー!! ヴォルフラム!」

「おはよう……? あれっ!? 朝なのか!?」

「朝だよ! 起きて!」

「ボーネンカーイは終わってしまったのか!?」

愛しの(←多分)婚約者がベッドで覆いかぶさってる状態でそのセリフかよ……。

「そりゃ終わってるだろ」

「お前が途中で連れ出すから、ちょっとしか飲めなかったじゃないか。また会場に戻るつもり
だったのに」

「まだ飲むつもりだったのか?」

「まあいい。ところでユーリは何をしてるんだ?」

「古今東西眠ってるお姫様を起こすには……決まってるだろ?」

「誰がお姫様だ!」

「ああ、元王子様だったな」

「ふん」

憎まれ口を叩くその顔の頬に手を伸ばして触れた。

ほんと、可愛い顔して言うことはこれなんだから。

見蕩れてると、エメラルドの瞳がおれの目を見た。

その美しい色合いにドキッとして上ずりそうになる声で訊く。

「なに?」

「しないのか?」

「え?」

「ああ、もう起きてしまってるからしないんだな。じゃあまた寝直す」

そう言って瞳が閉じられる。

ああもう!

どこまで可愛いんだよ!!

やばいの通り越して、もう無理だから!!!

あらためてキスしようとしたところで、部屋のドアがノックされた。

「おはようございます。ユーリ?」

ガクッと力が抜けたけどおれはすぐ扉に向かって叫ぶ。

「ごめんコンラッド!! 一時間後にまた起こしに来て!!」

「…………はい」

さて後が怖いっちゃ怖いけど、あと一時間、どうやっていただきましょうか。


※裏編に続く。

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