ユヴォ駄文(短編)

□Trick or Treat!!
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Trick or Treat!!







なんだか今夜はなかなかヴォルフラムが寝室にやってこないなあと思いながら、
ベッドの上でストレッチをしていた。

そんな時、突然扉が開いた。

「とりっくおあとりーと!!」

「はあ……!?」

部屋に入ってくるなりヴォルフラムは謎の呪文を叫んだ。

いや、それよりその恰好。

黒いミニスカート……ワンピースか、とにかく裾から長い白い脚をさらしている。

足元は黒いブーツ。

そして頭には見覚えのある形の黒い帽子。

……もしかして?

「ユーリ、とりっくおあとりーとだと言っているだろう。菓子をくれないと悪戯
するぞ!」

やっぱりハロウィンだったか。

「いやあまりの発音の違いに、反応できなかったけど」

「そうか? 聞いたままに言ったのだがな」

「誰に聞いたんだ、村田か? そんな恰好までさせられちゃって」

「恰好? なんか変か? いや、ちきゅうのはろうぃんのことならコンラートに聞いた
のだが。眞魔国の葉露飲とはずいぶん違うのだな」

「ああ、まあね……」

おれが改めてヴォルフラムの姿を下から上までじろじろ見ると、ヴォルフラムは衣装を
見せつけるようにくるりと回って見せた。

そんな勢いよく回るな! スカートの中が見えちゃうだろ!!

「コンラートに任せて作らせたのだが」

「……コンラッド……」

がっくりと脱力してしまった。

魔女の扮装なんだろうけど、ヴォルフラムはあんたの妹じゃなく弟だ。

「それよりユーリ、ぼくは、とりっくおあとりーとと言っているのだが」

「あ、ああ……」

少し考えた。

お菓子がここにないわけじゃないんだけど、やっぱりこれはイタズラが気になるよな。

「……どんないたずらをしてくれるの?」

「えっ!?」

「いたずらしてくれるまでお菓子あげない」

意味ありげに笑ってしまったおれは、もしかしたらいやらしい表情をしているかも
しれない。

「そ、それは……」

「おれ、ヴォルフラムにならいたずらされてみたいなあ……」

するとヴォルフラムは、一瞬何かを決意したような表情になって、おれの両頬に手を
伸ばした。

「え」

すごい勢いでおれの方へ近付いてくるヴォルフラムの綺麗な顔。

気付くと、キスされてた。

それも結構濃いキス。

ヴォルフラムの方からキスなんて、初めてかもしれない。

キスなんて今まで数えきれないほどしてるのに、急に胸がドキドキと鳴りだして苦しい。

歯茎を舌でなぞられて、ゾクッと電気みたいなのが背中を走る。

目を閉じると、ヴォルフラムの後ろ頭を捕まえて、自分からも仕掛けた。

「んん!」

嫌がっているような声を出されて、唇を離した。

「なに、嫌だった?」

「ぼくの方から悪戯してるんだぞ!? お前の方からしてきてどうするんだ!」

真っ赤な顔で怒るような口調のヴォルフラムの頬を撫でた。

「いたずらなのか? 全然嫌じゃないんだけど?」

「……うう」

「それとも、おれがいつもしてるキス、ヴォルフラムは嫌だったか?」

「そ、そういうわけじゃない……が」

「が、なんだよ?」

「いつもユーリの方からしてくるから……ユーリはぼくからされるのは嫌なのかも
しれないと思った、んだが」

そうたどたどしく言うと、ヴォルフラムはふう、とため息をついた。

「なに、そのため息」

「悪戯と言っても……思いつかないものだな。てっきりすぐに菓子がもらえるものだと
思っていたから考えてなかった」

「そうか」

おれはさらされているヴォルフラムの足をつうと撫で上げた。

「ユーリ?」

「いたずらしてこないのなら、こっちからしちゃうけど」

「悪戯をか?」

「ううん……」

唇を重ねる。

お前に、お菓子よりも甘い甘い時間をあげるよ。

内心戸惑いながら、その黒いミニスカートの中に手を忍ばせていった。



END

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