ユヴォルユで50のお題

□12 触りあいっこ
1ページ/1ページ

※ユヴォ前提だけどリバっぽいです。




12 触りあいっこ








今日思いついたルールはとても勉強になる。

ヴォルフラムがおれに触った個所を、おれもヴォルフラムのそこに触れる。

どこに触れてほしがってるか本人に教えてもらってるんだ、間違いがない。

…と思っていたのだが。

「あ…っ、ヴォルフ…! そんなふうに触ったら…」

胸を探られて腰までぞくっと何かが響いた。

触り返そうにも指先が震えている。

「へえ、色っぽい声を出すじゃないか」

ヴォルフラムはやたらと楽しそうにさらにおれに触れてくる。

意外とテクニシャンなことにも、余裕があることも歳の差を感じてなんだか悔しい。

とんだ誤算だった。もうやめたい。

「そんなふうに触ったら気が散って返せないよっ! ちょっとは手加減しろ!」

「いやだ」

つん、と駄々をこねるようにそっぽを向く表情一つも可愛らしい。

「なに?」

「もっと触りたいんだ」

湖底を思わせるエメラルドグリーンの瞳に懇願の色を浮かべて見上げられ、おれは
うっとつまった。

「な、なに? もしかして、普段受け身なことに不満があるとか、なのか?」

「いや、べつに」

ヴォルフラムはおれの晒した胸に頬をぴた、とくっつけて言った。

「ユーリの肌はとても綺麗だ。肌理(きめ)が細かいのだな。触り心地がいい」

うっとりとそんなこと言われても。

めったに見掛けないその表情にドキッとする。

肌理なんて…ヴォルフラムだって相当綺麗だ。

そう言ってやると、ヴォルフラムはクスッと笑った。

「ユーリはいつも、自分の魅力を知らなすぎる」

ヴォルフラムは頬をおれの胸に添わせ、おれの腕を掴んだまま、さっきから手を動かさない。

今日のルールはヴォルフラムが触れたところをおれが触るって趣向だ。

おーい、途中で止まるなよ。

勝手に太腿をそろっと触ったら手を払われてしまった。

「約束が違うぞ、ユーリ」

「…!」

鎖骨のあたりを舐められた。

返そうと思ったが、ヴォルフラムはおれの胸に貼りついたまま離れない。

「あの…」

「なんだ?」

「なあ、ほんとはヴォルフラムも…逆の立場やりたいとかじゃないのか?」

すると、ヴォルフラムはまた笑った。

「だからお前は自分の魅力を知らないと言うんだ」

「そんなのわかるわけないだろ。何が言いたいんだよ?」

ヴォルフラムは目を伏せて、ベッドに置いたおれの手に、その白い綺麗な手を重ねてきた。

「…ぼくを抱いている時のユーリは普段では欠片もない特別な『男』の顔を見せてくれる」

「…それ、ほめてるのか? 普段も男なんだけど?」

「毎回、見惚れてるんだ」

「え」

「その顔を見るのはぼくだけの特権だと思っていていいんだな?」

「なんだかよくわからないんだけど…?」

ヴォルフラムは身を起こして背を伸ばし、顔を近づけてきたかと思うと、おれの耳元
ぎりぎりで囁いた。

「抱くのは、ぼくだけにしてほしい、という意味だ」

「なっ」

おれは慌てて耳をふさぎながらも、その言ったことの内容に言葉を失った。

ヴォルフラムはなおも囁く。

「ぼくの独占欲は重過ぎるだろうか?」

おれは両手でヴォルフラムの肩を掴んでベッド上にその上体を押しつけた。

のしかかって、その耳元に唇を寄せて囁き返す。

「言われなくっても、他は興味ないよ」

おれはそこから離れて少し身を起こし、ヴォルフラムの顔を見た。

息が敏感なところにかかって感じたのか、翠緑の瞳は金の睫毛に閉ざされている。

右手で蜂蜜色の髪を梳きながら、左手で華奢な顔の輪郭を撫でた。

囁くような声で呟く。

「おれはもう、お前しかいらない」

ヴォルフラムは少し目を開いて、おれの胸と脇腹に手を伸ばしてきた。

おれはその手を払いのけた。

「もうそれ、やめ、な」

「だが言いだしたのはユーリ…」

「文句なら後で聞くから、おしゃべりもやめ」

早口で言って、さっさと唇で口を塞いだ。

口が離れると、おれは短く囁いた。

「気が散るから」

すると、ヴォルフラムが目を細めて言った。

「それだ。その顔で言われるともう何も逆らうことができないんだ」

おれは一つ息をついた。

「わかったから、これ以上邪魔しないでよ」

白い肌の鎖骨に一つキスを落とし、吸うと、呟いた。

「もう我慢できないんだ」



END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ