ユヴォルユで50のお題

□08 初めてのちゅう
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08 初めてのちゅう






寝る前にあまりに星が綺麗だったのでユーリとヴォルフラムは庭に散歩に出た。

月は暗く、ヴォルフラムは少し歩きにくそうだった。

ユーリはヴォルフラムの手を引いて歩いた。

花壇の白い花が僅かな月明かりに姿を浮かび上がらせるように咲いていた。

ユーリはヴォルフラムを引き寄せて肩を抱いた。

もう反対の手で空を指さして話しかけた。

「やっぱり、綺麗だね。見に来てよかった」

ヴォルフラムが自分の肩に回されたユーリの手を見つめた。

そして、無言でユーリの顔を振り返って見た。

ヴォルフラムは至近距離のためか、囁き声で言った。

「綺麗と言うなら、お前の方がよっぽどだ」

「え?あはは、何言ってるんだよ。ヴォルフの方が何十倍可愛いか」

「…」

吐息どころか、高鳴る鼓動の音さえ相手に聞こえてしまいそうな近距離で、ユーリと
ヴォルフラムは沈黙して互いの目を見つめた。

そして、どちらからともなく、ごく当たり前のように唇を合わせた。

あまりに鼓動が跳ねるので、口から心臓が飛び出しそうだなと思いながら、ユーリは
ヴォルフラムの唇に重ねていた自分の唇をそっと離した。

「…」

また少し、沈黙になる。

「おれ、ファーストキスだよ」

「ファー…?」

「ファースト・キス。キスしたの初めてだって言ったんだ」

「え…」

ヴォルフラムの顔がにわかに同情の表情になった。

雰囲気がぶち壊しだと思って、ユーリは拗ねた顔になった。

「なんだよ、その顔は」

「いや、では…ユーリのご家族はユーリにキスをしてくださらなかったのか?」

「おれの育ったところでは家族でキスする習慣はなかったんだよ」

「そうなのか?」

「そう。ヴォルフはそんなに今までキスしたことがあるのか?」

ヴォルフラムは指折りはじめた。

「母上に父上に叔父上に、兄上にコンラートに…」

「待て、コンラッドまでもか!」

「兄弟だからな」

あっさりと言ったヴォルフラムに、ユーリはため息をついた。

「はあ、で、他には?」

「他…いない…と思う」

ユーリはヴォルフラムの腰に腕を回してきゅっと抱きしめた。

「じゃあ、ヴォルフもファーストキスなんじゃん?」

「???5人もの人とキスしたが?」

「身内は数えないのがファーストキスの規則なんだよ」

「そうなのか。ではぼくもファーストキスだ」

ユーリは顔がにやけるのが止まらなくなった。

「何を笑っている」

「別に」

ユーリはふたたびヴォルフラムに唇を合わせた。

二回目はセカンドキスって言うんだ、とユーリは囁いた。



END

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