ユヴォルユで50のお題

□06 決着!
1ページ/1ページ

06 決着!







先に寝ようとしたヴォルフラムに、おれは言い放った。

「最近、ヴォルフ変わったよな」

「にゃに?」

寝ぼけた声が可愛いのになんて騙されないぞ。

おれもベッドに入りながら言う。

「以前は夜這いだって言って、おれを押し倒したほど積極的だったのにさ?」

「ああ、懐かしいな」

ヴォルフラムは少し眠気がなくなったようで、布団から頭を出して笑顔を見せた。

「最近はそんなのすっかりなくなったけど、どうしたんだよ。トモダチ・モードのスイッチ
入っちゃったのか?」

「もーど?すいっち?」

おれはうつむいた。

ヴォルフラムはおれの顔を覗き込んできた。

こんなこと言うの、女々しくて嫌なんだけどな。

「もう、おれのこと、好きじゃない?」

ぺち、と音がした。

ヴォルフがおれの左頬を手のひらで軽く叩いたんだと分かったのは、おれが無意識に自分の
左頬に手を当ててからだった。

「そんなこと、二度と言うな。ぼくがお前を好きじゃなくなるなんて絶対にありえない」

叩かれたのが左頬だったことと、ヴォルフラムが言った言葉が揺らぎなかったことに胸が
じんとなる。

おれはごめん、とつぶやいたが声が小さすぎて聞こえなかったかもしれない。

「……じゃあ、どうしてヴォルフはあれ以来迫ってこないんだ?」

ヴォルフラムはあの日を思い出すような顔で窓の方を向いた。

「あの後、お前はすぐ向こうの世界に帰ってしまったことを覚えているか?」

「え?うん…」

「ぼくから逃げるように風呂にこもった挙句に、だ」

「ヴォルフ」

「ぼくが迫ったりしなければもう少し傍に居られたのかと、思った」

「ごめん、無神経なこと言った」

ヴォルフラムは突然おれの顔を見た。

「別に。それより」

「なに」

「迫ってほしいのか?」

「いや…。…逆に、迫っても、いいかな?」

そう言ってベッド上に置かれたヴォルフラムの手に、おれは自分の手のひらを重ねた。

ヴォルフラムはおれの目をまっすぐ見たまま答えた。

「好きにすればいい」

おれは驚いてヴォルフラムの顔を見たまま少し黙った。

「……本当に?」

ヴォルフラムは表情を変えずに黙って頷いた。

「…どうして?ヴォルフだっておれに…したいんじゃないのか?」

「臣下のぼくが魔王陛下の身体を好き勝手にできるわけがないだろう?」

「じゃあ、前迫ったのはどうして?」

「迫りはしたが、最後までする気はなかった」

おれはがっくりと肩を落として息をついた。

「おれは最後までする気なんだけど…あいにく経験もないから多分へたくそだぞ」

「かまわない」

そう短く言うと、ヴォルフラムはおれの首回りに両腕を絡めてきた。

ドクン、と心臓が跳ねた。

そろそろと自分の両腕をヴォルフラムの背中へと伸ばし、唇を重ねた。

重なっている唇からお互いの高鳴っている鼓動が伝わりそうだった。



END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ