ユヴォルユで50のお題

□01 ホントに愛してる?
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01 ホントに愛してる?




「陛下の傍に立つのが、ぼくの務めだろう」

『務め』…。

ヴォルフラムはよく婚約者だから、という言い方をする。

今回だってそうだ。

そう言って聖砂国まで来てくれたのに、本当の近くには寄ってくれない。

…さっき引き寄せて抱きしめた腰の細さを思い出す。

吐く息の温かさがわかりそうなほどの距離の近さを思い出す。

そのまま腕の中に閉じ込めておきたかったのに、逃げ出すようにしてヴォルフラムは
今おれから2メートルほど離れた先の部屋の隅にいる。

今回はおれがヴォルフラムに刃を向けてしまったから、余計にそうなのかもしれない
けど、振り返ると前からそういう傾向はあった。

『愛』という言葉は口にはするけど、ヴォルフラムがおれに直接『愛してる』とか
『好きだ』とか言ってきたことはない。

おれはぼそぼそと話しかけた。

「傷むか?」

「別に何ともない、これくらい」

「そっか。……あのさ」

「なんだ」

「ヴォルフ、もしおれと婚約してなくても来てくれたかな…」

「ユーリ?」

「婚約してるからって義務感でここまで来てくれたんだったらそんなの気にしなくても
よかったのに…」

おれはそう言うけど、それは嘘だ。

義務でもヴォルフが俺のこといっそなんとも思ってなくても来てくれないよりはいい。

ただ、おれはヴォルフに言ってほしかったんだ。

好きだから傍に居たくて追いかけてきたんだ、と。

ヴォルフがおれの方へすたすたと歩いてきた。

と、思ったら、両頬をむにっと抓られた。

「誰が義務感でこんなところまで来るか!」

「じゃあどうして来てくれたんだ?」

そう言いながらおれは、おれに近寄らないようにしていたことを忘れてしまったらしい
ヴォルフを抱き寄せた。

「それは…」

「言ってくれるまで離さない」

脇腹の傷にだけは負担をかけないようにしながら、抱きしめる腕に力を込めた。

「ユーリ!」

「ヴォルフはおれの傍に居たい?」

ヴォルフは黙って頷いた。

「ヴォルフがおれの傍にいたいのはどうして?」

ヴォルフはため息に似た大きな息をひとつつくと、諦めた、といったような表情で微笑んで
おれを見た。

「どうしても言わせたいようだな」

「うん」

「不安にさせていたのならすまなかった」

「それはヴォルフのせいじゃないよ」

それより、ねえ?

「ぼくは、ユーリ、お前を……」



END

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