ユヴォルユで50のお題2

□47 僕のどこが好き?
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47 僕のどこが好き?






「ヴォルフ…」

大切な名前を呼ぶ。

その存在を腕の中に抱き寄せて名前を呼ぶ。

「ヴォルフラム」

蕩けるようなひと時は一瞬で、熱に浮かされた時間が過ぎるとヴォルフラム
はすぐまた素直じゃない彼に戻る。

「なんだ、ユーリ」

ほら、もういつものヴォルフラムに戻ってる。

「おれのこと好き?」

ううん、好かれてるのはわかってるんだよ。

「…なんだ、その質問は」

ごめん、だから好かれてるのはわかってるんだ。

「だってさ。おれみたいな普通の高校生が、お前みたいな美少年に好かれるの
はさ、ちょっと不思議だなって」

何が良くて好かれてるのかなとか。

「まだそんなことを言っているのか、いい加減に自覚しろ。お前は王なんだ、
『普通』の人物ではない」

「じゃあ、ヴォルフはもしおれが魔王じゃなかったら好きにはなってくれなか
ったのか」

ヴォルフラムの身分からしてその可能性もあるし…おれは庶民の育ちだし、
なんだか不安が残る。

おれはヴォルフラムの顔を覗き込んだ。エメラルドグリーンの瞳が輝いている。

ヴォルフラムははっきりと言った。

「歴史にもしもはない」

「歴史って…」

ため息をついた。

間違ってはいないだろうけど。悪い答えでもないけれど。

おれは、好きだってヴォルフラムの口から聞きたくて。

もう寝ようかな、疲れたし。

そう思ったところでヴォルフラムが訊いてきた。

「じゃあ、ユーリは、ぼくのことが好きなのか?」

おれは、一瞬不意を突かれてしまったが、微笑んで答えた。

「…好きだよ」

さっき、さんざん情熱を分け合ったのに、これだけでまた心臓が爆発しそう
に高鳴る。

「すごく、好きだ」

ヴォルフラムの一途なところも。情が強いところも。

ヴォルフラムの手を取って指先に口付けた。

剣だこが指に当たる。

「ヴォルフ?」

プライドの高いところも。

はじめは男で残念、なんて思ったけど、今では男らしい性格なんかも。

響きのいい名前も。

「…もっと」

蜂蜜色の髪も。エメラルドの瞳も。白い肌も。

ヴォルフは静かに手をひっこめながらおれに向かって囁いた。

「もっと呼ぶんだ、ぼくの名前を。ユーリ」

わがままも。高めの声も。

「ヴォルフ」

華奢な体も。可愛い顔だちも。すぐ赤くなる頬も。

「ああ」

ああ、もう、すべて好きなんだ。

言いだしたらきりがなくて。

「ヴォルフラム…」

せめて、眠るときくらい、腕の中に閉じ込めておきたい。

ヴォルフラムが何か言いかけていたが、おれは睡魔に勝てずにヴォルフラム
を抱きしめて眠りについた。



END

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