ユヴォ連載駄文

□恋すると
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恋すると・1話・やさしく包まれて



そういえば、最近あまりテレビを見なくなった(野球以外)。

アイドルとかモデルの女の子とか、可愛いとか思わなくなったんだよな。

まあ、もともと興味は薄かったんだけどさ。

眞魔国へ行けば、そこ見てもあっち見ても美形尽くしだからなあ。

顔や身体の造りだけじゃなくて立ち居振る舞いとか、もう次元が違う。

キリッとしてれば超絶美形! 国内三大美形の一人の王佐が傍にいつもついてるわけだし。

またもや三大美形の一人の愛の狩人、ツェリ様も超フレンドリーにしてくれるし。

審美眼も変わってくるよな、そりゃあ。

それにさ。

「ユーリ! ぼさっとしているなら早く寝ろ!」

声を掛けられて、ドキッとした。

考え事してるところ、いきなり現実に引き戻すなよ。

「え? 何、ヴォルフ」

「明日は式典なんだ。朝早くから大忙しだぞ! 早く休め!」

早々と布団に潜り込んでヴォルフラムは相変わらずキャンキャンと言っている。

「ああ、そうだったね」

「忘れていたのか? 全く。国民に元気な顔を見せるのも大事な務めだぞ!」

「うん、そうだな」

「ぼくはもう寝るからな」

「うん、なんだか気合入ってんなあ、ヴォルフ」

「……ユーリの婚約者として国民の前に姿を出すのは明日が初めてなんだ」

「あ? え! そうだったっけ」

「……」

すう、と寝息が聞こえてきた。

相変わらずいい寝付きだな。

何かと騒がしいと言うか活きがいいと言うか、とにかく元気なヴォルフラムが、ふかふかの
枕と布団に埋もれて気持ちよさそうな寝息を立てている。

もう少し経つと寝相が乱れてきて隣で寝てると大変なんだけどな。

この瞬間のヴォルフラムを眺めているのがおれはかなり好きかも知れない。

初めはただ、寝てても美形だなあ、って感心するだけだったんだけど、だんだんものすごく
可愛いって思うようになってきた。

ふわふわと枕に散った柔らかそうなはちみつ色の髪。

長い金色の睫毛、白いシーツに溶け込みそうな滑らかな頬。

綺麗なカーブを描く瞼、自然に閉じられたさくら色の唇。

とにかく可愛くって、撫でちゃいたいって思うと同時にこのままとっておきたい気持ちも
湧き起こる。

だんだんと可愛くなっていくのは、ヴォルフラムが成長期だからなのかな。

今はただ見て笑ってるだけだけどこれ以上可愛くなったら、寝ているのに思いっきり撫でくり
回してしまって起こして怒られそうで怖い。

でも今は眺めてるだけでも、おれ幸せかもしれないってほっこりしてくるんだ。

そうそう、だからさ。

これほど可愛いのが目の前にいると、ちょっとやそっとじゃ他を可愛いって思えなくなるのも
仕方ないかもしれないな。

枕に頭を預けて見つめているうちに、いつの間にか眠りに落ちる。

夜中に蹴られて目が覚めるけど、寝付いた頃の天使の様子との変わりっぷりに込み上げる笑いを
殺しながら布団を掛け直してやって、また眠るんだ。

ほっこり気分にやさしく包まれて。



『2話・礼服姿』につづく。
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