ユヴォルで10のお題

□4・双黒
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双黒



ユーリの友人だという大賢者も双黒だった。

双黒というのは特別なのかと思っていたが、実際に双黒の猊下に会ってみたら想像とは
大きく違った。

黒は貴い色だ。

猊下に気品がないとは言わない、むしろユーリより品はある方かもしれない。

でも貴さとか品だとか、ましてや色なんて関係なかったのだと今頃になって知らされた。

ぼくはユーリが世にも稀なる双黒だからこんなに惹かれるのかと思っていたのだ。

「よっ、ヴォルフラム。お前の方が遅いなんて珍しいな」

ユーリは気安い。

魔王でありながら、臣下であるぼくが寝所にもぐりこむのを簡単に許す。

ぼくはそれに甘えながら、他の者にもユーリは同じ態度を取るのだろうかと思うと
居ても立っても居られない気持ちに苛まれる。

「緊急にビーレフェルトの使いの者が来ていてな」

「へえ?どうしたんだ?」

「まったく大した用ではなかったから明日に回すことにした」

「ふうん」

気安い性格で柔らかい笑みを見せていても、ユーリの髪と瞳は気高い漆黒だ。

「あ…あのさ」

「なんだ、ユーリ」

「ヴォルフラムは、村田のことどう思う…?」

「猊下?どうって?」

「あの…ギュンターみたいに、『双黒だー!きゃー!』みたいな興奮状態になるのか
なあと」

ぼくは怒る気にもなれずに小さく息をついた。

「…バカにしているのか?」

「その反応はちょっとギュンターに対して失礼かも」

「双黒なんて見慣れているだろう。猊下よりこちらの方が美しい」

僕はユーリの髪に右手をのばした。

「な、変わらないよ…。ヴォルフラムに言われたくないっ」

「それに、ぼくはお前が双黒だからとか、見目がいいから…じゃないんだ」

猊下に会うまで気づかなかったんだけどな。

「え?よくわからないんだけど?」

本当によくわからなそうなユーリの表情に、少し微笑んでぼくは誤魔化すために自ら
ユーリの唇に唇を重ねた。

遠慮なくきつく抱きしめられて、ほっとする。



「ヴォルフラム。朝だよ」

王自ら起こしてくださるのも、面白い話だ。

しかし僕は朝が弱くて、なかなか起きられない。

少しずつ目を開けていくと、ユーリが着替えているところが目に入る。

眞魔国では貴い色とされる黒を当たり前のように身に纏って。

それは漆黒の髪と瞳によく映える。

こっそりとため息をついているのがばれていないだろうか。

やはり、少しは双黒の魅力も関係あるのかもしれない。



END

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